八尺様って話、「神話の法則」に意外に忠実

 スターウォーズで世界的ヒットを飛ばしたジョージ・ルーカスが、大いに参考にしたという神話の法則。神話学者のジョーゼフ・キャンベルがさまざまな神話を研究して、ひとつの原型みたいなものに還元した物語構造である。
 とはいえこれ、やっぱ冒険物語がいちばんしっくりくるやつだろ、と思って、知ってる話をいろいろ当てはめたら、意外にハマるのな。
 それでいろいろ気づいたことがある。


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 ボグラーが提唱した英雄遍歴の 12 ステージを紹介する意味で、2 ちゃんねるで有名な怪談、八尺様を分析してみたいと思う。

  1. おじいちゃんちにバイクで遊びにくる孫。縁側でくつろぐ。(日常世界)
  2. ぽぽ、ぽぽっぽ、などと変な声をあげるデカい女を見る。(冒険への誘い)
  3. 主人公の孫はあまり気にしない。(冒険の拒否)
  4. じいさんに女のことを話す。ばあさんから八尺様のことを聞く。(賢者との出会い)
  5. 主人公、二階の部屋に隔離される。(戸口の通過)
  6. 部屋は、仏像や盛り塩やお札、お守りなど主人公を助けるものがある。それでも主人公は落ち着かない。(試練、仲間、敵)
  7. 主人公、午前 1 時ごろ目覚める。(最も危険な場所への接近)
  8. 八尺様、じいさんの声音を真似て、主人公に呼びかける。主人公は必死に祈る。(最大の試練)
  9. 主人公、一夜を無事に越し、ばあさんに喜ばれる。(報酬)
  10. 車で村を出るべく出発する。(帰路)
  11. 八尺様が追いかけてくる。(復活)
  12. 生きてうちに帰る。(宝を持っての帰還)

 このうち最大のクライマックスはステージ 11 に設置されることが多いとされていて、八尺様もそれに忠実である。
 これを見ると、冒険物語だけじゃなく、ホラーでもいける気配。つかこの話、かなりよく出来てるのかも、という印象があるな。
 八尺様が追いかけてくるシーンって、回りに大人がいてひとりじゃないんだよね。主人公は安心していい、という状況かと思う。そこへ八尺様が大股で車に追いついてくる。これが怖いんだよな。
 二階の密室で、一番怖い部分は終わったはず、という読者の思いこみを突いてきてるのかもしれない。だとしたら、この神話の法則の構成が効いている、ということになるかもしれん。
 あと、こういう海外のホラー映画ばりに、モンスター的な存在が追いかけてくるっていう展開は、今までの怪談にあまりなかった気がする。村の境界を示すお地蔵さん、というのを設定しているのもうまい。お地蔵さんをすぎれば安全、というルールを示しておくことで、サスペンスの要素を演出できていると思う。

 八尺様だけじゃなく、いろいろな話を調べた結果。
 おれが思ったのは、まず、強引に考えればだいたい全部、このパターンに当てはめることができる。ということ。
 これはさすがに苦しいだろ、という作品でも半分くらいのステージは当てはめられた、ような気がする。特にクライマックス。吾妻ひでお先生とかの、ナンセンスでシュールな作品も、クライマックスっぽい部分はちゃんとしていた。
 当たり前だけど、そこはやっぱり鉄板ってことなんだと思う。
 どんな短い作品でも、クライマックスさえできていれば、作品になる。そんな印象を抱いた。

 あと、12 番目の「宝を持っての帰還」は、はぶかれることが多い。特に最近の作品にその傾向が顕著、という気がした。たわむれに分析して抱いた結果なので、はっきりとはいえない。
 問題を解決した、とハッキリ示さない、というかな。ここをはっきりさせると、閉じたエンディング、という印象が強まるのかもしれない。つか、連載漫画とかだと、ここを閉じちゃいけないのだろう。次週へつなげなくちゃいけないんだから。

 神話の法則は思いのほか強力だ。たしかに使いやすい。ステージを、はぶいたり、ステージを水増ししても問題なく効能を示す。多少、形を崩しても、ストーリーらしく見せられるのだ。
 ただ、これだけは絶対にはぶいちゃ駄目、というステージをあげるとすると、2、7、8、9 あたりかな、と思った。特に 7 の「最も危険な場所への接近」は、読者の気を引きやすいのではないかと思った。

 神話の法則についての説明はこちら、『神話の法則』の三幕構成 – 漫画の研究描き方ラボ様がくわしいかと思う。
 八尺様は、こちら Naver まとめの2ch で語り継がれる怖い話【八尺様】ぽぽぽぽぽ…が読みやすかった。

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