雷にうたれたヘラジカと、ジェフリー・ディーヴァーのこと

 2011 年に亡くなった俳優の児玉清さんは、読書家で有名だった。ゴルフの最中でも移動中は本を読みながら歩いた、という伝説がある。
 アメリカの作家ジェフリー・ディーヴァーのファンで、英語の原書で読んだという。
 はやくに亡くなったのは残念なことだった。
 死後に刊行されたディーヴァーの作品、たとえば「バーニング・ワイヤー」なども、児玉さんは絶賛したことだろう。
 

スポンサード リンク

 すこし前、ノルウェーの山脈で大量死したトナカイの画像を、インターネットで見た。300 頭のトナカイが死んだという。落雷による事故とされるがそれにしても被害が大きい。なにが起きたのか。WIRED の記事が詳しい。
 
 簡単にいうと、雷の落ちた地点が「0度等温線」、だったことが悲劇だった。
 0度等温線というのは、平均気温が 0 度の場所である。
 平均気温が、水の凍る 0 度。そんな寒いところがあるんだから、世界は広い。
 この 0度等温線では、地面の表面はだいたい湿っており、すこし掘れば凍った土にぶつかる。永久凍土というやつだ。
 巨大な氷の上に、泥が薄く敷かれた状態だろうか。
 
 電気は放たれると同時に伝導体を見つけ出し、いき場所を求めてめちゃくちゃに走り出す。そして意外なことに、水は良好な伝導体であるにもかかわらず、氷はそうじゃない、電気を通さないらしい。
 地面に落ちた雷は、地中のなかにもぐろうとして永久凍土にはばまれ、横に広がったのである。リヒテンベルク図形というのを描きながら、広い範囲にその凶手をのばしていった。
 そこにたまたま運悪くトナカイたちが群れていた、ということだろう。上記の記事では、トナカイが四本足だったことも被害を大きくした原因のひとつと書いている。すなわち、前足から入った電流が、後ろ足から抜けるさい、心臓を直撃するのだ、と。
 
 電気こえぇ。という話なんである。
 ジェフリー・ディーヴァーの小説「バーニング・ワイヤー」は、放電現象のアークフラッシュというものを起こして人を殺す、悪いやつが出てくる、サスペンス・ミステリだ。これを思い出しだよ。この小説、こえぇのよ、電気が。
 よく濡れた手でプラグの抜き差しするな、とかいわれるけどさ、この小説を読んだ後だと、しなくなるね。危ないってことがよくわかる。
 
「バーニング・ワイヤー」は、リンカーン・ライムシリーズの 9 本目だ。
 リンカーン・ライムという人物を主人公とするシリーズである。ライムというキャラクターは、頚椎を悪くして首から下が麻痺した元鑑識で、だいたいベッドに寝たきりになっている。このひとが面白いわけ。いつも不機嫌で、性格悪くて、優しくされるとヘソを曲げるし、障害のことに触れないでおくと小馬鹿にしだすし、しょっちゅうガミガミいうし、たまに自殺しようとするし。
 ただ、どえらい知能の高いひとだし、鑑識の経験も豊富なので、変な犯罪が起きると、NY 市警みたいなところから、すぐ協力を依頼されちゃう。
 ライムの手足になって働く鑑識が、アメリアっていう美人。赤毛の元モデルで、すっごいいい女。美人ゆえに「セクハラがひどいのよん」などと悩んだりするんだけど、車なんかギャンギャン飛ばしてかっこいいわけ。
 こいつらと、シリーズ物の醍醐味である、いつもの面子——ひと癖あるような仲間たちでもって、毎回、悪人を退治するんだけどさ。
 
 このシリーズの魅力はなんつっても敵なんだよね。悪人どもが人間離れしてるんだよ。ちょ、おま、どうやったらこんな壮大な悪の計画を遂行できんだよ、という、まずめちゃくちゃ頭がいいし、実行力がパねぇ。
 怪人なんだよ。
「バーニング・ワイヤー」なら「怪奇、電気男!」だし、「エンプティー・チェア」なら「恐怖、昆虫少年!」。「魔術師」だったら「驚異の魔術師あらわる!」って感じ。「ウォッチ・メイカー」なら、「ライム最大の敵!」って感じだな。
 この怪人っぽさ、あえてやってんじゃないかな、とおれは疑ってるんだけど、まぁわからない。とにかく、「ふぉっふぉっふぉ」って笑う怪人に、正義の味方チームが立ちむかうような、戦隊物みたいなノリの道具立てがたまらないわけ。
 犯人や犯人グループは、めちゃめちゃ頭いいから、悪の仕掛けがバンバン炸裂していく。けっこう、あっと驚くやり方で、もう、あっちこっちでドッカンドッカン。紙上に立ちあがるハリウッド映画ですよ。ディーヴァーさんの小説は、こういうところ、ちゃんとおもしろいんだよな。
 
 ま、それはおれの曲解で、ちゃんと真面目に書かれた小説なんだけどね。
 それにしてもだ。たとえばスティーブン・キングみたいな「やだみ」がない、少ない気がするんだよ、ジェフリー・ディーヴァーは。
 アメコミみたいな単純明快なエンタテイメントを指向するひとなんじゃないかな、と思う。「007」のノベライズをやってるみたいだし。
 最後になりますが、この稿、まとまりなくてすまん。

スポンサードリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です