タマフルで三宅隆太監督が話していた「ハイコンセプト」と「ソフトストーリー」

 毎週土曜日、夜 10 時、TBS ラジオ放送の「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」。昨晩 10 月 1 日放送の特集は、三宅隆太監督が、未公開映画を語る「これ、なんで劇場公開しなかったんですか?」特集だった。
 この話のなかで、ストーリー作りのヒントがあった気がしたので、メモ代わりに書き留めておこうと思う。自分のなかで曖昧だった部分を、すっきり整理してもらった気分だ。


スポンサード リンク

 特集は、劇場未公開作品のなかから良作をさがすコツ、それを三宅隆太さんに教えてもらおう、というもの。ただ、ここでは、そのコツについてはここでは触れない。
 あと、三宅監督は、よみものどっとこむで、これ、なんで劇場公開しなかったんですか?というコラムを連載している。

 おれが感心したのは、まず自分がどんな映画を見たいのか、を決める、という話のなかで出てきた、映画の分類について。
 大きくわけて、映画にはふたつのタイプがある、という。
 ひとつは、ハイコンセプト。
 もうひとつは、ソフトストーリー。
 このふたつを分けるのは、物語の展開である。このふたつは、プロットに対する考え方が根本的にちがうらしい。

ハイコンセプト

 ハイコンセプトというのは、二行でシンプルにあら筋がいえるタイプの映画。ジャンル映画が多い。だいたいこういう展開になっていくであろう、とわかるし、それを裏切らない。ジャンルの秩序をきちんと守る。わかりやすく明確なもの。ざっくりいえば、ハリウッド映画の娯楽映画など。

 展開においては、因果関係というものを大事にする。なぜこうなったのかをきちんと描く。主人公が動機づけされた行動をして、なんらかの結果が起きて、その結果がまた次の動機づけになって、さらに次のアクションへつながっていく。関係性の鎖、で話が動いていく。

 葛藤やクライマックスをへて、ひとつのエンディングへ向かっていく。それがハッピーエンドにせよバッドエンドにせよ、問題は解決をみて明確に終わる。閉じた(クローズドな)結末である。

ソフトストーリー

 内容がひと言で説明できない、ヨーロッパ映画っぽいの。人間ドラマとか、内面の心理とかを扱う。ストーリーだけ聞いてもなにが面白いのか伝わらない。たとえば「ある夫婦が旅行にいく。そして不仲が決定的になる」みたいな。面白さを説明するのが難しいタイプ。

 われわれの人生に起こりうる、偶然という要素を大事にしている。動機のないまま主人公が行動し、それが次の展開につながるとは限らない。その話はその話としていったん終わる。ひとつの映画にいくつかエピソードが並列して語られる。

 なので映画の終わる時は、ひとつの結末へ向かっていくわけではない。解決する問題としない問題があり、解決しないがゆえに想像の余地を残し、開かれた(オープンな)結末となる。解決していない問題がメッセージとして放り出された感じ。

 ハイコンセプトの例としてエアポート 2015 という映画がとりあげられる。
 宇多丸さんが、DVD パッケージの裏の解説文を読みあげる。

エアポート2015

ダラス発IA42便は、ロンドンに向けて上空を飛行していた。すると急に嘘のような嵐になり、機体は雷雲の中に突っ込んで行く。なんとか凄まじい乱気流を抜けると、そこは夜の闇の中だった。レーダー以外機能しなくなり、機長は現在地を把握するために機体を降下させるが、そこには信じられない光景が広がっていた。地上の街は炎に包まれ、まるで戦時中の様であった。さらに機体を複数の爆撃機が取り囲み、機長は無線で助けを求める。しかし、無線が繋がった先は管制塔ではなく、連合国軍の伍長を名乗る男だった…。

 最後の一行があるかないかで、プロットの力はぜんぜんちがう、とスクリプト・ドクターでもある三宅監督はいう。最後の伍長が出てくることで想像が広がる。
 タイムスリップしました、爆撃機で狙われました、までを一幕だとする。これで終わると、大事故や超常現象をあつかった映画みたいにも見える。やれ乱気流だ、戦闘シーンだ、を安い CG で頑張っている程度の予想しかさせない。
 最後の一文に伍長が登場することで、二幕は伍長と主人公である機長との葛藤が軸になるかもしれない、思わせてくれる。伍長が出てくることで、プロット上の面白さ、というものが示唆される。機長と伍長という立場のちがうふたりの絡み、そういうのがあるんだな、というわけ。

 ハイコンセプトの映画である限り、「タイムスリップした飛行機が、どうにかして現代に戻ろうとする」というジャンルのルールは守られなくてはならない。
 これは、「タイムスリップしました」から「現代に戻りました」までの間が、水増しになる危険性をはらんでいる。タイムスリップした以上、結末は予想できる。決定づけられている、といっていいかもしれない。戻れるか戻れないか、のふたつしかない。
 その間が空っぽなのだ。
 水増しでつくった危機、また危機がつづくだけの退屈な作品かもしれない。
 しかし、そこに伍長が出てくることで、空っぽだった真ん中が見えてくる。警戒し驚いている伍長に、こちらの特殊な状況を理解してもらわなくてはならない。協力してもらわないと、現代に帰れない。みたいになるかも、とか。
 伍長と機長というキャラクターの駆け引きやら信頼の醸成やらが描かれるのかも。そんな期待ができる。それがこの物語の中心なんだろう、ということを思わせられる。

 そういうサブプロットが書かれているかどうかが、面白さのバロメーターになる。
 展開で面白がらせようとしている可能性が高いから、と三宅監督はいう。
 アイディアの奇抜さより、展開で面白くすることっていくらでもできる、とも。

 と、ここまで。
 この後、三宅先生は、ハイコンセプトっぽい映画でありながら、ソフトストーリーみたいなことをやろうとしているもの、の魅力を語る。それはともかくだ。
 おれがなにに感心したかっていうと、要するにストーリーって人間ドラマに還元されるんだ、ということ。ひとと、ひとの葛藤であり、関係なんだ、という、そういうことに驚いた。それが面白さなんだ、という。
 それと、ハイコンセプトにおいては因果関係で物語がすすみ、主人公は動機づけで動く、ということも自分のなかで整理がついた。
 さらにいえば、導入部のアイディアは物語に引きこむ上で重要なんだろうけど、それが決まった時点で結末も決まるんだな。問題はそこへいきつくまでの中身ってことなんだな、というのも思うところあった。
 そんなの当たり前だろ、っていわれちゃいそうな観点ですまん。でもいろいろスッキリしたので、書き留めておく。

 なお、番組内で紹介されていた作品のいくつかはネットでも見られる(2016 年 10 月 2 日現在)。
 お金はかかるけどね。

  • 「エアポート2015」 Hulu
  • 「処刑島 みな殺しの女たち」「チャット 罠に落ちた美少女」 Netflix
  • 「妹の体温」 iTunes Store, YouTube(レンタル 400 円から)

スポンサードリンク