隠岐の海が 1 大関 2 横綱を破ったワケ。

 もう五、六年は前だけど、元・北勝力の谷川親方が、テレビで向正面の解説を担当している時、あまり名前の知られていない力士を激賞した。
「体がやわらかい、上背があって、ふところが深い。反応もよくて、教えたことをすぐに呑みこむ。ぼくなんか、すぐ教えることがなくなった」
「大関を目指せそうですか?」アナウンサーが訊くと、
「それ以上です。たちまち強くなると思います」
 みたいなことを強い口調でいっていた、ように思う(古い記憶なので正確ではない)。
 その話題の主が、隠岐の海だった。


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 イケメン力士、などといわれるが、どこかひとの神経を逆撫でする、ふてぶてしい面がまえ。仕切りはやる気なさそうで、勝負もどうでもよさそう。というか、相撲に興味なさそう。
 おれが見た隠岐の海はそんな感じだった。
 ただ嫌いにはならなかった。力士はひと癖あるほうが面白いし、隠岐の海はときどき強いから。
 なにより、谷川親方の激賞が脳裏にのこっていた。
「そろそろ強くなるんじゃないか」
 と思いながら毎場所見てたんだけど、ならんかったね。
 いっぺん 11 勝したことがあったけど、その後はべつに振るわないし。

 そのわりに、いろんなひとがこの力士に期待を寄せるんである。
 北の富士親方もそうだし、舞の海さんとか、デーモン小暮さんとか。正面解説のゲストのひととかも、期待する若手という質問に隠岐の海の名前をよくあげていた。
 隠岐の海もまた、注目を集める力士に勝ったりするんだ。綱取りの場所の力士をことごとく邪魔したり、初日に、白鵬に勝って、懸賞 50 本をさらったりもした。
 強くなりそうなんである。けど、なかなか成績がのびない。

 このひと、稽古が大嫌いらしい。
 そのことをインタビューに答えて悪びれるところがない。
 Numberなんだけど、さすがに笑ったわ。やらされる稽古には疑問があるみたい。モチベーションがともなわないと、いい稽古はできない、という考えのようだ。
 今場所、初日の正面解説はいつものように、北の富士親方だった。隠岐の海について、
「緊張感がなさすぎ」
 みたいなことをいっていた。
「わたしはもうね、あきらめましたよ」
 と、それまで隠岐の海によせていた期待を振り切るかのような発言もあった。
 それが三日目にしてこの成績である。
 今場所はなにが違ったのか。

 きょう、3 日目の解説の尾車親方によれば。
 場所前、隠岐の海はめずらしく稽古をたくさんしたらしい。
「稽古の成果が見られますね」
 とかいってた。
 えぇー。
 なにそれ。そんなんある? 稽古すれば勝てるなら、しようよ。まだまだ、はじまったばかりだけどさ。初日、二日、三日で 1 大関 2 横綱を撃破って。「めずらしく稽古したから調子がいい」じゃねぇよ。ってか今まで稽古してなかったのかよ。
してなかったんだよなぁ、これが。

 というわけで、隠岐の海のことが好きになってきた。おもしれーわ、このひと。
 ただ、今場所はどこかの時点でころっと負けて、そのままズルズル負けてゆきそうなんだけど、まぁ、わからない。期待しておこう。

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